Pan Man Wars






−序−







気持ちいいほど澄み切った青空。
茶色のマントをなびかせとぶ俺に地上に立っている二足歩行動物が手をふっている。

「あんぱんまーん!」

輝いた目、浮かぶ笑み。
あれは・・・ カバオか。
ふん。気安く、名前で呼ぶんじゃねぇ。

正義の味方ぶって、『パトロール』というものを始めてみて、もう何年たつのだろうか?
昔は、俺の頭がアンパンでできているというだけでひどい差別をうけたものだ。
今じゃすっかり友達ぶってるカバの野郎も、あのコロは水鉄砲で俺の顔面を狙い撃ちしていたし、ウサギの先公も生徒達に『あの人は危険ですので近づいてはいけません』と注意していたことを覚えている。
それが、今じゃ、「腹がすいた。顔を食わせてくれ」などとねだってみたり、「正義の味方」と呼んでみたりいい気なものだ。
「愚民ども。残念だが、俺は、正義の味方なんかじゃねぇ。」
思いっきり叫んでやりてぇが、まだそのときではない。

今、ここでいってしまったらバイキンマン様の野望を台無しにしてしまうからな。

バイキンマン様が、悪役を演じ、俺が正義の味方を演じる。
そうしてこの国は保たれている。
王もいないこの国が保たれているのは、少しの刺激があるからだ。
悪を恐れ、愚民は身を寄せ合い争いを忘れる。
義を慕い、愚民は身を許し安らかな床に就く。
・・・この秩序が崩れ去ったら、そこにあるのは、絶望。
そして、国の破滅。
堕ちる天使たちが急増し、俺達の仲間は増えていく。
この国から踏み出そう。
バイキンマン様と、この国の破滅への第一歩を。

食パンの野郎や、カレーパンの野郎を常日頃仲間と呼んでいるのもこのためだ。
奴らの驚いた顔が目に浮かぶ。
心を満たす絶望と怒り。
そうだ。それこそ、パンの細菌面【ウィルスサイド】に堕ちる大事なモノ。
悪魔に成り下がればいい。
奴ら二人は、世界パン連合の中でもTOP10に入る強さの持ち主。
こっちの世界でも活躍してくれるだろう。


・・・ひゃはっはっはっはっ。
こんな世界、滅びてしまえばいい。
さぁ、もうすぐだ。絶望への扉が開く。




続く?

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